恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~

 モラトリアムとは、そもそも猶予という意味だ。

 私は年相応の現実的な恋愛を避けていることから、

 梨香にそう言われてきた。

 だけど梨香だって、健吾との関係を曖昧にしたまま

 決着をつけることを先延ばしにしている。

 立派な、と言うとちょっとおかしいかもしれないけれど、

 完全にモラトリアムなのだと言いたい。

「怖いのよ」

 しばらく沈黙した後、梨香はぽつりとそう言った。

「怖い?」

 梨香が?

「ゆめだってそうなんでしょ? 元カレのこと」

 言い返せない。

 今日も会社で顔を合わせたけれど、軽くお礼を言っただけで必要最低限の話しかしなかった。

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