執事と共に賭け事を。
「一つ、質問してもいいかい?」


唐突な言葉に、恵理夜の思考はワンテンポ遅れた。


「最もシンプルで、最もくだらない質問だ」


ヒガキは、足を組み替えながら言った。



「もし、君が沈み行く船に乗っているとする。君と春樹クンのどちらかが助かるとしたら、君はどうする?」



「……船の上で、最も不謹慎な質問ですね」


ようやく、搾り出した声。

ヒガキは、不適な笑みで何も答えない。

その笑みは、恵理夜を見透かしているかのようだった。

答えを出さない、恵理夜の心を。
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