執事と共に賭け事を。
「これは、どういうことでしょうか」


春樹が、冷たい声でそう口にした。

しかし、手が震えている――怒りを隠しきれていないのだ。


「あら、これがゲームよ。そして、貴方が勝ったらこれをあげるわ」


ツバキは、手で弄んでいたものを見せた。

それは、小さな鍵の束だった。

恵理夜を拘束するものを外す鍵だろう。

奪われることの無いよう、ヒガキの手に渡される。


「退路がないのは、わかるわね」


春樹は、ぎりぎりと奥歯を噛んだ。

そして、恵理夜を見つめた。

怪我はしていないようだ。
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