執事と共に賭け事を。
ツバキの最後の一投。

彼女は微笑んで恵理夜を見つめたままダーツを放った。


「んっ」


恵理夜の悲鳴。

金属製の猿轡から、唾液が一筋床に落ちた。

ツバキがいたずらに放ったダーツが、恵理夜の顔すれすれの位置に刺さっていた。

エリアで言えば7の位置――得点にならない場所だ。


春樹は、自分を押さえ、集中力を切らさないでいるのに必死だった。


「ごめんなさいね、どうやら手元が狂ったようで」


ハットトリック――全てを真ん中にヒットさせる力のあるツバキが、そんなことを起こすはずがない。
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