執事と共に賭け事を。
春樹は、強く口元を拭っていた。

その目は、勝つ方法を計算していた。

そして、やはり勝つ方法は一つしかなかった。

だが、春樹を見る恵理夜の目は動揺の色を隠しきれていなかった。


春樹がスローイングラインに立ち、恵理夜に声を掛けた――


「お嬢様、目を閉じてください」


きょとん、という風に恵理夜は瞬きをした。


「私を信じて」


猿轡から、再び唾液が滴り落ちる。

疑いと、怒りと、緊張している証拠だ。


「必ず、貴女を助けます」


春樹は、最大限の忠誠をこめて言った。


「貴女が、望むなら」


その言葉が、恵理夜を裏切ったことはなかった。
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