執事と共に賭け事を。
恵理夜は、ゆっくりと目を閉じた。


「そのまま動かないで、少しだけ、お待ちください」


安心させるような深い声色。

そして、春樹は的に構えた。


――つい、とわずかに空気を動かす。

――ざくり、と生々しい音が恵理夜の耳元で響き、その身体が痙攣する。

――続けざまにもう1投。

――ざくり、と同じ音。


明らかに、ダーツが刺さった音ではない。

恵理夜は、ぱちくりと瞳を瞬かせた。
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