執事と共に賭け事を。
「では、封じ手を放っていこうかしら」


悠然たる表情から一変、瞳の奥に怒りを孕んだツバキがダーツを構えた。


恵理夜は、視力のよいその目を凝らした。


ツバキが、息を吸い吐き出す瞬間――


「恵理夜様っ」


春樹の動揺の声が響く。


恵理夜が、ひょい、と肩を持ち上げたからだ。

ダーツが、恵理夜の肩を掠り、床へと落ちた。

恵理夜は、怯むことなく、唾液にまみれた猿轡を噛んだまま、目元だけで優雅に笑っていた。
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