執事と共に賭け事を。
「眉間に、しわが寄っていますよ」


と、眉間をとんとんと弾かれた。

恵理夜は思わず額を押さえた。


「貴女らしくない表情ですね」


そう言いながら恵理夜を見つめるその目は鋭いが、敵意らしいものは全く感じられない瞳だ。

なおも恵理夜に向けられるヒガキの視線との違いに戸惑いすら覚えた。


「このフレーバーを当てられますか」


春樹は、グラスを恵理夜の手に握らせた。

恵理夜は、恐る恐る一口含んだ。

冷たい感触が口の中を満たし、喉へと下る。

爽やかで、冷たさを伴った鼻に抜けるような香り。


「レモングラス?」


震えそうな声で、辛うじてそれだけを応える。
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