執事と共に賭け事を。
「感じられたのは、それだけでございますか?」


恵理夜に、挑むような瞳。

だが、勝負というよりは遊んでいる、そんな瞳だ。

恵理夜は目を閉じ、一息にグラスを煽った。

恵理夜の感覚が、外界から喉に集中する。

冷たさが、喉の渇きと共に焦燥感をも洗い流してくれたようだ。


「ペパーミントに、一つまみの塩ね」

「ご名答です」


春樹は、満足げに目元を緩ませていた。

敵意の全くないその瞳に、恵理夜は深い安心感を覚えた。


同時に、自分の感覚がいかに相手の目だけに向けられていたかが良くわかった。

ヒガキは、飲み物を手にした今も恵理夜の目を見つめている。
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