執事と共に賭け事を。
「腕のほうは、大丈夫ですか」


革の手枷で固定された二の腕を、無意識に撫でていた恵理夜の手を包みながら春樹は言った。

ギリギリと、力任せに固定されていたのだ。

傷こそ出来ていないが、痣になっていた。

痛みが無いほうがおかしい。


「私が、至らないばかりにご迷惑をお掛けいたしました」

「春樹……?」


春樹の手が、そっと恵理夜の袖口から差し込まれる。


「お力になれなくて申し訳ございませんが、どうか私の運だけでも」

「んんっ」


腫れた二の腕を撫でられる。

直接肌をまさぐられる感覚に、恵理夜は思わず声をあげる。

春樹は、目を細めながら恵理夜の耳元に息を吹きかけた。

びくり、と跳ね上がる恵理夜の反応を楽しんでいるようだ。
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