執事と共に賭け事を。
「貴方のこと、すべて聞きました。あなたの言葉一つ一つに、意味深な重みがあったのは、それまでしてきたつらい思いが含まれていたんですね」


ヒガキの過呼吸は、やがて激しい咳へと変わった。


「そして、私へ向けられた憎悪もわかる気がします。同じように両親を亡くしたのに、幸せに生きているように見えたのでしょう。でも……」


水を吐き出し終え、ヒガキの咳が収まり始める。


「でも、それは支えてくれる人がいたからです。私を疑うことなく信じて、自分が傷つくことをいとわずに支えてくれる人がいたからです」


ヒガキの咳が止まり、穏やかな呼吸が戻ってきた。

恵理夜は、ヒガキの背に手を回したまま震えるその手を握った。


「沈み行く船、そして車の話――貴方が体験したものですね。そして、今もこんな形で貴方を苦しめている。でも、私を苦しめても何も変わらないと思います。現に、この手は震えて……」


ヒガキは、恵理夜の手を握り返した。

強い力で。
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