執事と共に賭け事を。
祖父は怪訝そうに眉を寄せた。


「指輪は帰ってきました。私も春樹も、無事にここにいます。ヒガキさんとのことは、今、蹴りがつきました」

「だが、こいつはわしらの家に喧嘩をふっかけてきた」

「いいえ、ヒガキさんの眼中には私しかありませんでした。もし、お祖父様たちに損害を与えることが目的なら、カジノに興じている間から私に話しかけるなんてことはなかったでしょう」

「お前の、指輪が目的だとしても?」

「だったら、指輪を奪うことが出来た後の勝負には、応じなかったでしょう」


祖父は、黙った。

ただ、その威厳に満ちた目を恵理夜に向けていた。


恵理夜の膝は、かすかに震えていた。

怖かったのだ。

両親のいない恵理夜にとって、肉親にはっきりと抗議をするのはこれが始めてのことだ。

自分を、育て作り上げてきてくれたものに、ここまではっきりと抗議をするのはこんなにも足がすくむようなことだとは思わなかった。
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