執事と共に賭け事を。
「私にあるのは、貴女を信頼する力だけです」


恵理夜を信じているからこそ、手を上げた。

恵理夜を信じているからこそ、自ら身を投げる決意を示した。


「私が持つ力は、すべてそこから生まれているだけです」


恵理夜は、自分にそこまで絶対の信頼を寄せる力があるのか、ということに向き合わされた。


「私は、そこまで貴方のことを……」

「信じてくださっていますよ」


春樹は、迷いのない声で言った。


「私がダーツを放ったとき、貴女は私のことを全面的に信じてくださった」


春樹の目に、柔らかい色がにじむ。


「今は、それだけで充分でございます」
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