執事と共に賭け事を。
「お嬢様、」


いつの間にかテーブルを離れたのか、春樹が後ろから声を掛けてきた。


「あら、春樹」


ツバキが、親しげに微笑む。


「昔を思い出して一勝負いかがかしら」


と、何かを投げるジェスチャーをした。


「いえ、お嬢様のそばについておりますので」

「夜にでも、バーで待っているから」


そして、ツバキはいたずらっぽい上目遣いで言った。


「テキーラを、用意しておくわね」


春樹の目に、はっきりと動揺が走った。


「それじゃ、失礼するわ」


ツバキは、妖艶な笑みを残して去っていった。
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