恋色語
風が髪を浮かばせる。側まで行くと片桐は背を向けて座った。

一度深呼吸して私は立ったまま、髪を押さえながら口をあけた。


「ああのさ、きの」

「病院…行ったのか?」

「…うん。行ってきた」


それから沈黙が続いた。何て言えば…どうすれば。

……やめた。考えるなんて私らしくない。


「昨日絢香さんの容態を見て、神宮寺さんから事故のことを聞いた。

最初に関わるなって言ってたのって…私を見ると絢香さんを思い出すからだよね。そっくりだから。

それで…胸が痛くなるからだよね」


片桐の返事はない。けど否定しないということは、それで合ってしまったということ。


「それなのに私…今まであなたの気持ちが分からないまま会って。それで悲しくさせて……ごめ」

「違う」
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