閃火高遠乱舞

 会議室に集まった軍師・武将はそれぞれ席に着く。
 大きな円形の机には白紙とコップだけが置かれ、それ以外には何もない。
これは情報の流用を防ぐための策である。
帝は、信用している諸将にのみ情報を口で伝える。
それを諸将は暗号化してメモするのだ。
 一見すれば日記、予定表、食べたいものリストのように思われるかもしれない。
それを日本の国家機密とは誰も考えないだろう。
「アメリカが日本に向けて軍を派遣した、という報せが入った」
 聖徳が淡々と事実を述べていく。
帝はそれを静かに眺め、諸将は真剣な面持ちで聞く。
「今度はアメリカかい?」
「人気者はつれーな」
 宝王子は嘆息し、新川は軽く笑いとばした。
戦前の会議中とは思えないような軽々しさだ。
それがよいところでもあるのだが。
重苦しい会議は敗戦を呼ぶことがある。
しかし、慎重にはなってもらいたいと聖徳は痛む頭を抱えた。
「それが、そんな風にも言ってらんないの」
 そんな聖徳を救ったのは大山である。
「上陸予定時刻が明日の未明。しかも、率いているのがシーザーとアルベルトだなんて…!!」
「誰だ、それ?」
「もうっ、ホントに呑気なんだから!!」
 大山は宝王子と新川を物凄い勢いで振り向いた。
そのあまりの剣幕に、林と山代も口を閉ざす。
「シーザー・シルバーバーグ、26歳。最年少で将軍の座を勝ち取った武将で、通り名の『猛将』は伊達じゃないくらいに強い…!!」
 アメリカは広い。
そのアメリカで将軍になるのと、日本で将軍になるのとでは倍率がかなり違う。
 アメリカにいる強者をのし上がってきた、それだけでかなりのものだ。
「一方、アルベルト・ノックスは29歳。シーザーが叩き出した最年少記録の、前の最年少記録を出した人だよ。通り名は『智将』」
「『猛将』と『智将』のコンビ、ねぇ…」
「しかも、二人並んで出た戦は負けなしなの!!」
 コンビネーションはかなりのものなのだろう。
しかし、それだけでは無敗の名は頂けない。
実力・運も優れているはずだ。
「本土に上陸される前に叩く。すぐ用意させろ」
「了解!!」
帝の締め括りに、一同は呼応の声を高らかに上げた。


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