閃火高遠乱舞



 日本軍の中枢、日本国軍中央総司令部本館には日本が関する軍事全てを請け負う存在があった。
その存在は『帝』と称され、全軍事権力を有する。
軍の兵たちはその帝のもとで働くのだ。
 さて、現在の帝は歴代の帝の中でも希代な才を持っていた。
それは武だけでなく、世界各国の言語を理解し把握、さらには状況に応じた指示ができるという総合力に長けたものだった。
よって支持力は高い。
 そんな彼が住むのは、本館の中央に配された私室だ。
華美なものを飾り立てるのを嫌う性格のため、置かれている調度品はいたって質素なものばかりである。
しかしよく見ると、それ相応のこだわりがあるのか、素材は超一級品。
青の緞帳が揺らめく中に、寝台だけがドンと置かれている。
 その寝台に怠惰な様子で身を起こしているのが、日本で知らぬ者はないとまで言わしめる、我らが帝である。
彼の睡眠時間はかなり短い。
平均を切るどころか、その半分でも摂っているのか甚だ疑問なところだ。
寝台に横になっても報告が入ったり、急に妙策を思い付いて思考に耽って夜を過ごしたりなどざらにある。
 今回は前者だった。


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