閃火高遠乱舞
2章




 初陣を迎えた年も、ようやく終わろうとしている。乾いた風が吹き抜ける中、人々は年末年始の準備に忙しい。デパートやスーパーは今頃、てんやわんやしているだろう。
 そんな時期でも、もちろん軍は活動している。
冬は短い。しかしそれを上手く活用できた国が、翌年の勝利をおさめることができる。
 宝王子をはじめとする武将・兵たちは、己を磨くための鍛練に勤しんでいた。先のアメリカ、及び中国戦での敗北。国土を攻め落とそうとした戦ではなかったが、彼らの誇りは大いに傷つけられた。
 しかも、アメリカ調査で北朝鮮や韓国の不穏な動きも発覚している。アダリーの狙いは日本・中国にそれらを討たせることだったのだろうことは、今になれば分かる。しかし、放っておくこともできない。
 よって、春になれば遠征であろうことは分かっていた。
 第三勢力となることを宣言した先日からその慌ただしさは急増している。他の不参戦国に声をかけたり要望したりと、国家間の仕事が増しているのだ。
 主にそれは「風神」の仕事なのだが、諜報などで忙しいときは「漆黒」に回ってきたりする。
 「雷迅」は海上に留まり目を光らせることが多くなり、必然的にみなと会う機会はめっきり減っていた。
 帝は常に本館に留まり、各地の様子見は「疾風」の宝王子が担当している。聖徳をはじめとした文官たちもまた、各国に散って団結に努めているのだ。
 そんな冬に、帝のもとへ一通のメールが届いた。セキュリティの壁を通り抜けた極秘のメールだ。

 発信場所は、スペイン。




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