閃火高遠乱舞


 空一面に星が出た頃。
日はとうに暮れ、太陽の代わりに月がぼんやりと浮かんでいる。
淡い月光に照らされた山々からは、少し早い夏虫の鳴き声が響く。
夜に、昼のような激しい暑さはなかった。
 辺りに燈された火が夜闇を薄める中で、純白の隊服を着た将軍を先頭にした大群が陣を敷いていた。
ひたりと静かな緊迫感がその場を満たし、鋭い視線は一直線に前方へと向けられる。

 今回は初陣。
しかし、負けるつもりなどなく、手を抜く気もさらさらない。
緊張でバーサーク化する可能性はあるが。
 作戦はこうだ。
 まず、宝王子率いる「疾風」を中心に、敵を引き付ける。
その間に中央で文官たちが火矢を用意し、「風神」がその軽い身のこなしで油を準備する。
 火計だ。
指揮するのは、文官の中でも最も若い軍師・ヤマト。
彼の師であるヒカルは、火計のスペシャリストだった。
 通信機能付きのマップがチカチカと光る。
シジッと少しばかりノイズが入ったと思えば、報告が入った。

「『疾風』陣の前方およそ500メートルに敵陣営を確認!来ます!!」

「よし!行くぜ!!」



馬が、駆け出した。



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