閃火高遠乱舞
「この戦況下、ガルドルーダス家もシュトーレン家も動かせない。ヴィクター家も治世補佐で手放せない状況にある」
「…だから『私』のもとに連れて来た、と?だが、なぜ我々公爵が…まさか」
「そのまさかだ。きっとこれからの戦いに『星鍵』が必要になる時が来る」
 フランスに伝わる国宝の中に、「星鍵(クレ・エトワール)」というものがある。真の
鏡と義の剣。それらは四大公爵の血脈のみ使用展開できるという特性故、ミカエルといえど操ることはできない。
「『星鍵』を使えと言うのか!?」
「でなければ世界は割れ、崩れる」
「……」
 ミカエルもまた、世界情勢の不安定さを見抜いていた。たとえ今回戦乱が起こってなかったとしても、近い内に勃発していたに違いない。それほどまでに、世界の歪みは大きくなっていた。まるで、何者かが導いているように。
 日本は今負け越していると言ってもいい。北朝鮮には勝てたが、中国にもアメリカにもドイツにも負けている。それでも存亡しているのは、ただ単に運がよかったからだ。しかし、このような状況で最も必要不可欠なのは、その運のよさなのかもしれない。
 日本の人口はフランスを上回っている。しかし、兵の数は逆だ。フランスの心根には常に、独自の「騎士道」がある。農民でも商人でも、それは変わらずある。
 しかし、日本の多くは何も持たず生きている。危機感もなければ緊張感もない。そのため、いざというとき動けない者が大半なのだ。結果、フランスのように徴兵しても、何もできない者ばかりとなってしまう。
「クラウディオ…日本に行ってくれないか」
 「星鍵」と共に。ミカエルの頼みに、クラウディオは息を吐いた。




< 87 / 95 >

この作品をシェア

pagetop