閃火高遠乱舞
「お、クラウディオだ。アイツ、よく判ったな」
「えええええ―っ!!」
弾かれたようにバッと振り向く。ゴキッと不穏な音がしたような気もするが、そのようなことに構っている余裕などない。宝王子は焦りすぎて、口が回らなかった。
「ややや、ヤバいですよ!あのバカ止めねぇと!!」
「ヤバい?何でまた」
トウヤが宝王子の慌てっぷりに首をかしげると、傍らで同様に焦っていた大山がぐりんと振り返る。あわあわと落ち着きなく手足をバタつかせつつ、早口に説明した。
「クラウディオさん、新川のモロタイプなんですよ!新川って女性に目がないから、何しでかすか!!」
私的なときは少々思慮が足りない新川だが、顔もまぁ男前で性格は明朗、軍部では上層部である。一旦街に降りれば、ソッチ系の女が群がる程度にはモテる。一晩のお相手など彼の携帯電話を見れば山ほどいるはずだ。
それほど彼は節操がなかった。危険視するな、という方が無理な話だ。
しかし、それを聞かされてもトウヤはケロリとしていた。
「へえ?でもアイツは無理だと思うぜ」
「え、なぜですか?」
「アイツは人間嫌いっつーか…愛情不信なんだよ」
クラウディオが最も畏れるのは「制御」できなること。懐柔されること。そして自己が崩壊することである。
「恋」という感情は望まずとも人を狂わせる。何かが切っ掛けで箍(たが)が外れれば、見苦しい行動に奔らせる。それは自尊心の高い彼女には耐えられないことなのだ。
だから常に、クラウディオは己の感情を制御している。例え酒に酔ったとしても、無意識にその自制は働く。それだけ彼女の抑制は身に染みついていた。
そのことを知っているトウヤは、クラウディオのことを片鱗も心配していなかった。一人や二人言い寄っても、キツイしっぺ返しが来るだけだろう。
そう思いながら、トウヤは慌てふためきつつ駆けだす三人を余裕綽綽に追うのだった。
「クラウディオ」
声を掛けると、珍しく困窮した表情でクラウディオが振り向く。彼女の眼の前では、必死に新川を止める三人が闘っていた。
(あ、叩かれた)
羽交締めにしていた宝王子が一向に大人しくならない新川に痺れを切らして、とうとう手を挙げていた。ゴツンと鈍い音がする。
そんな様子を目の前でやられて困惑するな、という方が難しい。
「えええええ―っ!!」
弾かれたようにバッと振り向く。ゴキッと不穏な音がしたような気もするが、そのようなことに構っている余裕などない。宝王子は焦りすぎて、口が回らなかった。
「ややや、ヤバいですよ!あのバカ止めねぇと!!」
「ヤバい?何でまた」
トウヤが宝王子の慌てっぷりに首をかしげると、傍らで同様に焦っていた大山がぐりんと振り返る。あわあわと落ち着きなく手足をバタつかせつつ、早口に説明した。
「クラウディオさん、新川のモロタイプなんですよ!新川って女性に目がないから、何しでかすか!!」
私的なときは少々思慮が足りない新川だが、顔もまぁ男前で性格は明朗、軍部では上層部である。一旦街に降りれば、ソッチ系の女が群がる程度にはモテる。一晩のお相手など彼の携帯電話を見れば山ほどいるはずだ。
それほど彼は節操がなかった。危険視するな、という方が無理な話だ。
しかし、それを聞かされてもトウヤはケロリとしていた。
「へえ?でもアイツは無理だと思うぜ」
「え、なぜですか?」
「アイツは人間嫌いっつーか…愛情不信なんだよ」
クラウディオが最も畏れるのは「制御」できなること。懐柔されること。そして自己が崩壊することである。
「恋」という感情は望まずとも人を狂わせる。何かが切っ掛けで箍(たが)が外れれば、見苦しい行動に奔らせる。それは自尊心の高い彼女には耐えられないことなのだ。
だから常に、クラウディオは己の感情を制御している。例え酒に酔ったとしても、無意識にその自制は働く。それだけ彼女の抑制は身に染みついていた。
そのことを知っているトウヤは、クラウディオのことを片鱗も心配していなかった。一人や二人言い寄っても、キツイしっぺ返しが来るだけだろう。
そう思いながら、トウヤは慌てふためきつつ駆けだす三人を余裕綽綽に追うのだった。
「クラウディオ」
声を掛けると、珍しく困窮した表情でクラウディオが振り向く。彼女の眼の前では、必死に新川を止める三人が闘っていた。
(あ、叩かれた)
羽交締めにしていた宝王子が一向に大人しくならない新川に痺れを切らして、とうとう手を挙げていた。ゴツンと鈍い音がする。
そんな様子を目の前でやられて困惑するな、という方が難しい。