閃火高遠乱舞
「トウヤ、私はどうするべきなんだ…?」
「どうもしなくていいんじゃねぇの。…護衛は?」
トウヤは一向に気にすることなく、ゆるりと辺りを見回す。彼女が一人でいるとは思い難かったが、それらしき人影はない。一瞬何のことかという顔をしたクラウディオだが、すぐに理解して頷く。
「ああ、レイスのことか?そこにいる」
示された方を見ると、角の隅に男がムッツリと立っていた。金の長い髪と磁器のような白い肌をした、大きな男だ。上下共に黒づくめなのにも関わらず、皆に気にした風はない。何よりも印象的なのは瞳だ。左目は茶色なのだが、右目は燃えるような冷たい赤の色を湛えている。滅多にない双眸である。
そんな彼に気づき、四人は動きを止めた。
「お知り合いですか?」
「警備員か、どっかのお偉いサンの護衛じゃねぇの」
「いや、あれは機械人形(マシーナリー・マリオネット)だ」
「マシーナリー・マリオネット…?」
「おう」
「機械人形」とは、クラウディオの祖父に当たる科学班室長が彼女の誕生日に贈った最高傑作である。その技術は他の追随を許さず、誰も越えられずにいるという伝説の人物となっている。残念ながら四年前に亡くなってしまったが、その技術は応用され、受け継がれている。
「へぇ、じゃあ人じゃないんですね」
宝王子は彼――レイスをまじまじと凝視すると感嘆の声をあげた。どう見ても人間にしか見えなかった。
「レイス」
「…なんだ?」
クラウディオが呼ぶと、どこか遠くを見ていたレイスがやって来る。ユラリと結われた二本の毛先が揺れ、黒衣を翻す。
――その瞬間。
「……ッ!!」
辺りは不審な、人工的な靄に覆われた。敵襲だ。女性の悲鳴と、動揺を露わにする男性(ムシュー)の唸り、緊張に帯びた兵の舌打ち、慌てふためく爵位所持者の狼狽の声が響く。
しかし、目の前がかすんで敵の数も分からない。圧倒的不利である。敵が虎視眈々と襲撃に備えていたのに反して、こちらは丸腰に近い。恐慌(パニック)に陥ってしまって、二進も三進もいかない。
「どうもしなくていいんじゃねぇの。…護衛は?」
トウヤは一向に気にすることなく、ゆるりと辺りを見回す。彼女が一人でいるとは思い難かったが、それらしき人影はない。一瞬何のことかという顔をしたクラウディオだが、すぐに理解して頷く。
「ああ、レイスのことか?そこにいる」
示された方を見ると、角の隅に男がムッツリと立っていた。金の長い髪と磁器のような白い肌をした、大きな男だ。上下共に黒づくめなのにも関わらず、皆に気にした風はない。何よりも印象的なのは瞳だ。左目は茶色なのだが、右目は燃えるような冷たい赤の色を湛えている。滅多にない双眸である。
そんな彼に気づき、四人は動きを止めた。
「お知り合いですか?」
「警備員か、どっかのお偉いサンの護衛じゃねぇの」
「いや、あれは機械人形(マシーナリー・マリオネット)だ」
「マシーナリー・マリオネット…?」
「おう」
「機械人形」とは、クラウディオの祖父に当たる科学班室長が彼女の誕生日に贈った最高傑作である。その技術は他の追随を許さず、誰も越えられずにいるという伝説の人物となっている。残念ながら四年前に亡くなってしまったが、その技術は応用され、受け継がれている。
「へぇ、じゃあ人じゃないんですね」
宝王子は彼――レイスをまじまじと凝視すると感嘆の声をあげた。どう見ても人間にしか見えなかった。
「レイス」
「…なんだ?」
クラウディオが呼ぶと、どこか遠くを見ていたレイスがやって来る。ユラリと結われた二本の毛先が揺れ、黒衣を翻す。
――その瞬間。
「……ッ!!」
辺りは不審な、人工的な靄に覆われた。敵襲だ。女性の悲鳴と、動揺を露わにする男性(ムシュー)の唸り、緊張に帯びた兵の舌打ち、慌てふためく爵位所持者の狼狽の声が響く。
しかし、目の前がかすんで敵の数も分からない。圧倒的不利である。敵が虎視眈々と襲撃に備えていたのに反して、こちらは丸腰に近い。恐慌(パニック)に陥ってしまって、二進も三進もいかない。