【完】 SECRET♥LOVE 危険なアイツの危険な誘惑
翡翠は自宅に向かう電車の中にいた。
車内では通勤に利用するスーツ姿の男女が目に飛び込んでくる。
琥珀に会いたい、ただそれだけで乗り込んだ早朝の電車とは違う風景だ。
数時間後には翡翠もスーツに身を包みまた電車に揺られる。
それまでに気持ちを切り替える必要があった。
翡翠の脳裏を支配する全ての物から・・・
本当なら琥珀に会えたなら全て解消するはずだった。
会えたなら・・・それでよかったはずだった。
それなのに朝以上の不安と寂しさを翡翠は感じていた。
琥珀はただ無言で抱きしめるだけで何も語ろうとはしなかった。
琥珀が抱えている物がどれだけの物であってもその苦しみを少しでも一緒に背負えたなら・・・翡翠は琥珀の腕の中で、琥珀が話し出すのをただ静かに息を呑む想いで待っていた。
静かな空間の中で時間だけが過ぎていく。
何も語ろうとしない琥珀に余計に不安を募らせていった。
それが、心配させたくないそんな琥珀の配慮があっての事だとしても。
翡翠は別れをも覚悟していた。
いつもと違う琥珀に・・・
抱きしめられる力が強くなればなるほどに、琥珀の苦痛が伝わって来るようで、でもどうしても・・・
「別れよう。」
その一言が言えずにいた。