【完】 SECRET♥LOVE 危険なアイツの危険な誘惑
会社に着くと翡翠は真っ先に琥珀のデスクに視線を送る。
鞄だけがデスクの上に置かれ、琥珀の姿はそこにはなかった。
一通りオフィス内を見渡すと部長室から出てくる琥珀と部長の姿が視界に入る。
「えっとみんなおはよう。 ちょっと手を休めて聞いてくれ。 木崎君から辞表が出された。 理由はみんなも知っている通りだ。 木崎君は1週間後神崎グループに戻ることになった。」
「急な話で申し訳ありません。 残り1週間で引き継ぎ等よろしくお願いします。」
目の前で頭を下げる琥珀の姿が、滲んでぼやけた。
涙が零れ落ちないうちに・・・
翡翠は目の前の現実から目をそらすように給湯室に逃げ込んだ。
さっきまで一緒にいたはずなのに何も聞いていない。
突然さよならを言われたような絶望感が翡翠を襲う。
「主任…。」
今一番聞きたくない愛しい声が翡翠の耳に届く。
「お父様の会社に戻るのね。それがいい選択だと思うわ。残り数日で引き継ぎよろしくね。」
「主任・・・ごめん。 ちゃんと話すから今晩主任の家に行くよ」
琥珀はそれだけ告げると翡翠に背を向けて給湯室を出ていく。
優しい言葉も、不安を取り除く事もなく。
ここは職場、琥珀の態度の方が冷静で正しいのかもしれない。
それでも今は非常識でも抱きしめてほしかった。