【完】 SECRET♥LOVE 危険なアイツの危険な誘惑
「送るよ。」
立ち上がると同時に翡翠はよろめき男に腕を掴まれた。
すぐ目の前には懐かしい男の胸が・・・
「大丈夫だから・・・」
翡翠はその胸から顔をそらす。
「あの頃も酒弱かったよな。そのくせ自分の限界も考えずに飲むんだよな」
「離して、大丈夫だから」
「マスター、翡翠の分も俺にツケといて。」
男は翡翠の言葉を右から左に流すと翡翠を軽々と支えた。
「放って置いてよ。 」
「そんな状態でよく言うよ。」
男はタクシーを捕まえると翡翠を押し込み助手席の窓を叩いた。
「運転手さん、彼女自宅まで」
数年ぶりの再会が終わろうとしていた。
もう二度と会う事はないだろう。
永遠の別れを意識したとき翡翠は後部座席の窓へと手を伸ばしていた。
全開にした窓の先に遠ざかる男の背中があった。
男の名前を呼ぶ声が夜空に響く。
タクシーは夜道を走りだす。
イルミネーションで飾られた街路樹が窓越しに翡翠の視界に飛び込んでは流れていく。
無言のままの空間で指先に伝わる体温。
恨んでも憎んでも忘れる事が出来なかった男の体温。
二度と感じる事はないはずだった男の温もりがそこにはあった。