【完】 SECRET♥LOVE 危険なアイツの危険な誘惑
現実から逃げるように飛び出したあの日。
ただ授かった新しい小さな命を護ることだけしか考えられなかった。
あの時身ごもっていた小さな命ももう4歳になっていた。
翡翠は実家の花屋に身を寄せていた。
子供を身ごもり帰ってきた娘を目にして、穏やかな気持ちでいろという方が無理だろう。
それは翡翠の両親だって例外ではない。
父親は激しく怒り翡翠を引っ叩きそうになった。
それをわが身を盾にして護ってくれたのが翡翠の母親だった。
あの日母親が淹れてくれたホットミルクの味を翡翠は生涯忘れられないだろう。
そんな母親の肩を借りて泣くだけ泣いた翡翠は小さな命のために父親と母親になろうと決意していた。そのためにも強くなろうと。
そして二度と泣かないと決めていた。
そんな翡翠に父親もまた胸を痛めていた。
翡翠は両親のそばでシングルマザーとして瑠璃を産み花屋を手伝いながら瑠璃を育てていた。
父親はいなくても祖父母の愛情にも包まれ瑠璃は素直に育っていた。
がむしゃらに築きあげた地位や名誉を捨ててまで手に入れた小さな幸せ。
今はその小さな幸せを護る毎日。
夕暮れ時の赤く染まった空。
手を繋いだ翡翠と瑠璃の影が仲良く並ぶ。
夕日に反射して光る瑠璃の栗色の髪。
「ママ~。パパだよ」
瑠璃が指さす先で夕日に反射する人物の姿があった。
瑠璃と同じ栗色の髪が夕日に反射していた。
「瑠璃!!」
翡翠の手を離して走り出す瑠璃を追いかけているうちに目の前の人物の顔が鮮明になっていく。
「パパ~。」
瑠璃を両手を広げ受け止めた人物の姿に翡翠は息をする事さえ忘れていた。
「主任。」
懐かしい声が翡翠の鼓膜を震わす。
「そんな・・・なんで」
男は瑠璃を抱きかかえると翡翠に歩み寄った。