【完】 SECRET♥LOVE 危険なアイツの危険な誘惑
夕日がそんな3人を赤く染めていた。
「迎えに来たんだよ。主任、遅くなってごめん」
「あんた相変わらず馬鹿なの? 私がずっとあんたを待っていたと思ってるの?」
言葉では反発しても鼻の奥がジ―――ンと痛んで、翡翠の頬を涙が伝い落ちた。
瑠璃をひとりで産むと決めたあの日から泣かないと決めて生きてきたのに。
「俺、会社辞めてきた。 あの日の主任と同じ地位も名誉も全て捨ててきた。何もいらないんだ主任とこの子がいたら・・・」
「馬鹿!!会社どうするのよ。」
「親父のやつ恥ずかしい話し現役で、少し調子よくなったと思ったら弟なんか作ってくれちゃってよ。その子が成人するまで頑張らんといかんとか言い出して張り切ってる。元々俺は会社なんて継ぐつもりなかったし、主任をあんな世界にまきこむつもりもなかった。だからって親父もすぐすぐ本調子で仕事が出来るわけじゃなかったから会社離れられなくて、でももう大丈夫。親父も完全復帰を果たしたし跡取りだって産れた。俺は用無しってわけ。」
「何勝手な事してくれてるのよ。」
「それはこっちのセリフだ。挙式当日に花嫁に逃げられた俺に主任が腹の子共々消えたって部長から聞かされたんだぞ」
「あんたに報告する義務なんてなかったじゃない。私達別れてたし」
「そう言うと思ったよ。すぐにでも主任を追いかけて連れ戻したかった。でも中途半端なままじゃ主任に拒絶されるのはわかっていた。」
「何よそれ。」
「部長に言ったんだろう? 俺も部長も許さないと。部長傷ついてたぞ。」
「それは・・・ でも今では部長には感謝してるわ。突然仕事を投げ出し退職願だけ送りつけた私をわざわざ訪ねて来て心配してくれて、その後の処理も引き受けてくれた。それにあんたの所に戻る様におせっかいな事も言ってたわ。私には出来なかったけど・・・」
「せめてもの罪滅ぼしだったんだろうな」
「そうかもね。でも嬉しかった。この子が出来て人の優しさを素直に受け止めれるようになったの」
「そっか・・・。それでも俺の事は許せなくてもいい。許せなくてもいいからそれでも俺のそばにいてくれないか?俺には主任とこの子が必要なんだ。
0(ゼロ)から主任と一緒にやり直したいんだ。」
「勝手すぎる。私はもうあんたの上司でもなければ主任でもない。今の私は瑠璃の母親でしかないの。瑠璃さえいてくれたらそれでいいの」
「それでも俺の事をちゃんとこの子に教えてくれていた。だからこの子は迷わず俺を父親として受け入れてくれた 」
「それは瑠璃がパパの事知りたがったから。大人の都合でこの子から父親を奪ってしまったから、せめて写真だけでも父親の存在を教えてあげたかったの。あんたのためじゃない」
嬉しいはずなのに口を開けば嫌味と皮肉しか出てこない。
「瑠璃おいで。ママと帰るわよ」
琥珀の腕の中にいる瑠璃を抱きかかえると琥珀に背を向けて歩き出した。
「パパ~。パパ~。パパ~。」
瑠璃の琥珀を呼ぶ声は翡翠の胸を締め付けそれ以上動けなくする。
瑠璃から再び父親を奪う事は翡翠には出来なかった。
瑠璃を下すと翡翠の腕をすり抜けて琥珀のもとに走り去っていく。
遠ざかる足音に背を向けたまま耳を傾けた。