Neverland
「いった~。」
たいして痛くないくせに雄は大げさに腰を抱えた。
「…最近の子って礼儀正しいね。私"失礼します"なんて今でも教務室に入る時くらいしか使わないよ。」
なんとなく気恥ずかしくなり、話題を切り出した。
「何の用事で教務室に呼ばれるんだか。」
ぼすっ
もう一度私の鞄が飛び、鈍い音がした。
「もう、先行くから。」
さらにからかわれて、居心地が悪くなった私は学校に向かってさっさと歩き始めた。
だいたい、もう時間がギリギリになっている。
「せっかく待っててやったのに。」
「ちょっと急がないとだよ、早く行こっ。」
ぶつぶつ言う雄を置いて、私は早歩きになった。
「なぁ、走るぞっ!!」
急に後ろからぐいっと手を取られ引っ張られた。
「えっ、はぁ?ちょ、待ってよ!!」
私の声を無視してわけのわからないまま雄は強引に手を引っ張り全速力で学校へ走った。