愛のない世界なんてない
「裕兄ちゃんは?」
「裕ちゃんは多分寝てるわよ」
「裕次くん寝てるのねぇ……」
「裕次早くこないかなぁ」
尋斗と美知子さんとお母様と圭は裕次の話ばっか。
もう飽きる。
「あのさぁ……華ちゃん」
「何」
私は変な汗を流した。
「裕次ん所行ってあげたら?」
圭が私に言った。
「なんで私なのよ…」
「今から咲ちゃん呼んでも危ないし、"あれ"やったの華ちゃんでしょ?」
"あれ"というのはきっと珈琲カップの事だろう。
やだなぁ。
行くのやだやだ。
怖いもん。
でもそんな事言ったらきっと情けないとか言われるしなぁ。
「華ちゃん?」
「分かったよ!行くよ!」
私は焦りながらすぐ椅子から立った。
「頼むわね、華芽ちゃん」
美知子さんにそう言われたからすぐ二階に続く階段を登る。
そして部屋の前のドアに来たら二階ノックをして部屋の中に入った。
……緊張するなぁ。