愛花
画伯は小さなアパートを借りた。

アトリエにするつもりだった。

美術商の仕事をしながらも隠れてでも絵を描いていたかったのだ。

そのアパートで圭織をモデルに絵を描き始めた。

誰にも内緒でこっそりと絵を描き始めた。

季節は冬を迎えようとしていた。

゛圭織…君のイメージはやっぱり水彩だな。油じゃ君は表せないな。″

゛んー。私もやっぱり水彩が好きかな。油絵は豪華な感じがするし私にはあわないよ。″

肖像画は完成した。

…これで本当にお別れなんだ…

…これでいいのよ…ね……

゛圭織…完成してしまった。楽しかったよ。君といるのがこんなに楽しいなんて…別れたくない…女々しいと思うよね。君と離れたくない。″

涙が流れた。

二人で泣いていた。

自然だった。

抱き合った

愛し合った

幸せだった。


圭織は何も考えなかった。

考えたくなかった。

隣に画伯が寝ていた。

゛画伯…″

゛画伯はやめてよ。僕は平岡和哉だよ。″

゛和哉…でいい?″

゛よろしい!じゃあこれからもよろしく!″

また抱き合った。

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