愛花
最悪のお正月は勝手に過ぎていった。

悠史さんは新年のあいさつだと言って編集長と一緒にやってきた。

当たり障りのない話をして帰っていった。

悠史さんが来たら雅美のことを聞きたかったのに…どうでもいいように思った。

優等生の私は取り乱さないし責めたりしないようにしないとね。

できるわけないじゃない!

寂しかった。

でも今度来たときは最初の時みたいに編集者とイラストレーターに戻らないとね。

担当が変わらないかな。

仕事はやめたくない。

でも顔を見るのも辛いだろうな。

でも逢いたい。

逢って話がしたい。

顔を見たい。

涙が止まらない。

絵が描けない。

気持ちが揺れてしまってどうしていいのかわからない。

…おばあちゃま、会いたい。

確か年賀状が来ていた。

捜し出して見てみる。

おばあちゃまの字だ。

でも少し震えているように見えた。

 あなたの道を信じて進んでください。今は報われなくても必ず幸せは訪れます。

 おばあちゃま、本当に幸せは来るの?

 信じていいの?

久しぶりに散歩に出かけよう。

絵も描いてみよう。

スケッチブックを持って出かけた。
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