それでも、まだ。
―――ドンドンッ!!バァン!!
セシアはレンの部屋に一応ノックして、勢いよく扉を開けた。
『え?何?ノックした意味ある??』
『…神田が、いないんです。』
呆気にとられていたレンを気にせずにセシアが言うと、レンはすぐに険しい顔付きになった。
『…っ、部屋の中の窓が開いてて、もしかしたら……っ…他の部屋にもいなかっですし……』
セシアが言い終える前にレンは無線を手にとった。
『…とりあえず落ち着いて、セシア。もう一回このフロアを捜してみて。僕は他のみんなに伝えるよ。』
宥めるような口調に、セシアは少し落ちついた。そして深呼吸をして、頷き、部屋を出た。
セシアが出て行ったのを見届けたレンは、暫く考え込んだが、気を取り直したように無線を握り直した。
『……あ、アヴィルさん?…緊急事態です。』
アヴィルに大まかに要件を伝えて無線を切り、レンはふっとため息を吐いた。
『……やっぱり、この世界にいるのは危険すぎるのかな。』
誰にも届かない呟きは、暗闇に消えていった。