それでも、まだ。
セシアがひと通りフロアを探し、部屋に戻ってくると、部屋にはマダムがいた。
『マダム……』
『…闇の気配が残ってる。』
窓の淵を触りながら、マダムは言った。
セシアがマダムに近づくと、マダムは振り返り、眉間にしわを寄せた。
『じゃあやっぱりシーホークが…??』
『…ああ、この部屋にいたのは確かだろうね。でも妙だ。』
『妙??』
セシアが首をかしげると、マダムは手をかざした。
するとみるみる闇がマダムの手のひらから出てきて、部屋全体をあっという間に埋め尽くした。セシアが避ける暇もなく、セシアは身動きが出来なくなった。
『ま、マダム…っ!?』
セシアが慌てて声を上げると、マダムはフッと笑った。
『…私の闇は、今みたいに、闇が広がっていってすべてを飲み込んでいく。でも、奴の闇はその逆だ。闇がすべてを奴の中に引きずり込むのさ。つまり、奴が通った後は絶対に闇は残らないはずだ。』
マダムが手を引っ込めると辺りの闇は消えていき、セシアは動けるようになって安心してホッと息を吐いた。しかし、その周りの闇は完全に消えず、少しマダムの闇の名残が残っている。
『わざと残したってことですか…?』
『おそらくね。理由は分からないけどねぇ。』
2人が考え込んでいると、部屋の扉が開き、2人以外のすべての幹部が入ってきた。どうやら今日は誰も任務に出ていないようだ。
『何か手がかりはあったか?』
アヴィルが低い声でいうと、マダムは肩をわざとらしくすくめた。
『…ああ。闇が残ってたさ。わざとらしくね。』
『…やはり黒組織が動いているのか……』
ベルガが呻くように言うとレンは腰に差している刀の柄を鳴らした。
『…もう考えてる暇はないんじゃない??行くよ、ジル。』
『わ、私も行きます!』
『おい、待ておまえら!』
部屋を出ていこうとしていた3人をアヴィルが慌てて止めたとき、窓の方で観察していたシキが窓の外を指さしながら突然声を上げた。
『おい、みんな!!あれ見てみ!!!』