それでも、まだ。



シキに言われて全員が窓の方へ駆け寄った。



『なんだあれは…………』


アヴィルは眉間に皺を寄せた。




窓から見えたのは、いつも通りの広く薄暗い漆黒の森、そしてその上を気味悪く渦巻いている深い闇であった。

闇の上では雷が鳴り響いている。


『…あれは、まさか全部シーホークの闇だっていうのか…?なんて規模だ…』



ジルは重々しくつぶやいた。その脳裏には、ペトラルカの言葉が反響していた。



ーーー主は、完全に復活した!



ジルはギリっと歯を食いしばった。



『ベルガさん……』


幹部たちがどうするものかとベルガを見ると、ベルガはしばらく押し黙っていたが、やがて口を開いた。


『…今は、たとえ私たちでも、あの森に入るのは危険だ。一時様子を見る。』

『そんな!神田があそこに連れ去られたのかもしれない『セシア。』


セシアはすぐさま反論したが、ベルガに静かに制された。またすぐ口を開こうとしたが、ベルガの有無を言わせない威圧に押し黙った。



『これは命令だ。アヴィルでも、あの森に入るのは今は許さん。闇雲に行くのは危険すぎる。……こちらも戦力を整えねばなるまい。』



ベルガの言葉に、みんな顔を引き締めた。


ーーーそれはつまり、近いうちに黒組織との戦いが始まるであろうということ。



『…必ず奴らはまた仕掛けてくるはずだ。きっと、真理さんはその囮だ。必ず助け出す。だから今は我慢してほしい。』



ベルガの言葉に、セシアはゆっくりと頷いた。


『…でも、具体的にどう準備しますか?奴らの規模、戦略は、この前の操られた村人たちを見たように、もう予想が困難ですよ。』


レンが刀の柄を握りながら言うと、今度はアヴィルが口を開いた。


『それは今から考える。とりあえず今は、漆黒の森の周辺を調べろ。念入りにな。1人では行動するなよ。あとマダムは、あの闇について調べてほしい。』


アヴィルのテキパキとした指示に、皆頷くと、ベルガとアヴィル以外、足早に部屋を去っていった。


『…セシア。』


セシアも皆の後に続こうとしたが、アヴィルに引き止められた。


『…無茶はするなよ。』


その顔は、なんとも言えない表情で、セシアはその心情を読み取れなかった。


しかし、セシアはそこまで気にすることもなく、軽く頷くと、自分も部屋を後にした。




『さて……どうなりますかね、これは……』


『……必ず、勝たねばなるまい。二度と、あんなことは…………』


『………………。』



2人は窓の外のどす黒い闇を見ながらどこか違うところを見ているかのように暫く立ちすくんでいた。





ーーー世界会議まで、あと3週間………
< 152 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop