それでも、まだ。
冒険と疑惑





『さあ、着きましたよ。』



神田はシーホークに連れられ、部屋の窓から組織を抜け出した。


そしてそのまま漆黒の森へと入り、しばらく進むと闇の中から城が現れた。



『……大きい』



シーホークに丁寧に降ろされた神田は、周りを見渡して思わず呟いた。



先程抜け出した組織は30階もあり、どちらかというと縦に大きかったが、黒組織の城は森の中ということもあり、縦にはそれほど大きくなかったが、横に大きかった。奥行きもかなりありそうである。



しかし城は闇にうっすらと包まれていて不気味さが際立ち、城のそばの木々に止まっているカラスの群れはこちらを威嚇するように鳴き叫んでいて、神田なぶるりと身震いをした。



『大丈夫ですよ。さあ、中に入りましょう?』



ハッとして神田がシーホークの方を見ると、シーホークはいつの間にか城を囲む城壁の真ん中にある大きな門の前に立ってこちらを待っていて、神田は小さく頷くと、小走りでシーホークの後を追った。



その様子にシーホークはにっこりとほほ笑むと、門の方に向き直り、軽く手をかざした。すると、ガコンと大きな音を立てながら、門はゆっくりと開き始めた。


門から城の扉に続く道には、柱が何本か立っており、それにぶら下がる蝋燭が薄っすらと道を照らしていた。



『……ちょっと癖のある者たちばかりですが気にしないでくださいね。』


『は、はぁ……?』




2人の歩調に合わせて扉もゆっくり開き、2人はそのまま城の中へと入った。真っ暗な城内に神田はちょっと緊張して、シーホークの後ろにこっそりと隠れた。


そして2人が完全に入ると、扉はまた重々しく閉じた。




―――パチンッ



シーホークが軽く指を鳴らすと、辺りの壁に設置されていたのであろう蝋燭が一気に着き、城内を明るく照らした。辺りは大きなスペースがあり、目の前に2階に続く大きな階段があった。




神田がちょっと安心して、ひょこっとシーホークの後ろから周りをうかがっていると、その大きな階段からドタドタと金髪の男が降りてきた。




『―――主!一体どこに行って……』



そこで神田の存在に気付いたのか、金髪の男はまじまじと神田を見た。

神田はびくりと身を震わせた。




『こいつはまさか……』




『リーヤ、話はあとです。とりあえず私の部屋に行きましょうか。』




神田はやっぱり2人のやりとりをじっと聞くことしかできなかった。






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