時を止めるキスを
泣かないと決めて睨みつけると、相手はコツンとひとつ床を鳴らしてこちらに近づいてきた。
そのあいだ私が立ち尽くしていたのはきっと、彼の放つ苛立ちが感じ取れたからかもしれない。
手を伸ばせば届きそう。そんな絶妙な距離を残して歩みを止めた男は、ようやく口を開いた。
「——ホントにそれが答え?」
「……はい」
無駄を省いた問いかけがより一層、私を苦しめる。泣きそうになりながら、コクンと一度頷いた。
「もう一度聞く。——本当にこれで良いのか?」
「そうですってば!」
聞いてなかったと言わんばかりの態度に苛立ち、思わず声を荒げてしまった。
うそだ、うそだ。こんなに胸が痛いのも、目の奥がツンと感じられるのもすべて、この男が原因なのに。