時を止めるキスを


いつでも素直に可愛く尽くす女は、私とは遠くかけ離れた苦手分野。これはきっと不変だろう。


でも、一生ひとりで片意地を張り続けるよりは、対峙する扇情的な眼差しを素直に受け入れてみようじゃない?



あの真っ暗な日の夜、孤独に陥った私にあたたかいキスをして、再び時間を進めてくれた人に出会えたのだから……。




「あひ見ての 後の心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり」


「……え?何ですかそれ」


その後、巡回中の警備員さんとすれ違い、お疲れ気味の彼に見送られてオフィスをあとにした私たち。


チーフもといドラゴン……ではなく、龍(早速呼ぶように指令が下ったのだ)と私は22時過ぎに、最寄り駅より同じ快速電車に乗っていた。


「ネットで調べれば?」

「もう覚えてませんよ!」

ガタンガタンと規則的に揺れながら、都会の街並みをすべるように走行する電車内は学生と社会人で今日も混雑していた。


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