ただ今、政略結婚中!
「ほどいて、もう一度結べばいい」


もう一度、優しく唇が重なる。


朝の忙しい時間なのに、私の我が侭に付き合ってくれる。


そう言ってくれて嬉しかった。


だけど、本当は出勤前の忙しい時間にもう一度ネクタイに時間を取られるのは嫌なのかもしれない。


「……ううん。いいの。今度、時間のある時にやらせてね?」


壁時計を見ると、出掛ける時間だった。


「時間だよ?」


「……わかった」


私の髪にキスを落とすと、玄関に向かった。


「行ってくる」


「いってらっしゃい……」


軽く手を振る。


隼人さんのスーツ姿は、自称スーツフェチの私をときめかせるけれど、不意にさみしくなって笑顔になれなかった。


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