記憶の桜 -栄枯幻世-
芸妓さんの着ている着物や帯は、借金して作っている物だと聞いた事がある。
もちろん、鈴蘭さんから借りた物は彼女が借金をして作った物だ。
「ああ、それは気にせんと大丈夫どす。あれは土方はんがあらかじめ、用意しはった物やし…」
「えっ…」
土方さんの方に視線を向けると、彼は知らん顔をしてお酒を呑んでいる。
「せやから、気にせんと大丈夫どす。それより、涼はん」
鈴蘭さんが深刻そうな顔で私を見てくる。
何?私、何かやったかな…。
「もう一度、芸妓姿にならへん?」