記憶の桜 -栄枯幻世-
彼の遺体は旧幕府海軍の副総裁である榎本武揚さんによって、水葬される事になった。
「山崎君…、今までよくやってくれたな。ゆっくり眠ってくれ」
布に包まれ、戸板に固定された山崎さんに近藤さんが別れの言葉をかけると、彼の骸は原田さんと永倉さんによって、海に落とされた。
彼はゆらゆらと水面を漂うと、静かに海の中へ消えて行った。
「山崎さん…」
正直、私は泣きたかった。
でも、私よりも仲間として共に戦って来た土方さん達の方が辛く、哀しいはずだ。
そんな彼らが涙を流さず、耐えている。
だから、私も泣く訳にはいかなかった。