記憶の桜 -栄枯幻世-
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もうどれくらい泣いたか分からない…。
ただ1つ言えるのは、夜が明けようとしている事だ。
私はまだ夜の名残が残る明るむ空を見上げた。
「くしゅんっ」
長時間、外にいたせいか、すっかり身体が冷えてしまっている。
すると、肩に何かかけられた。
「浅葱色の羽織…?」
「やっと落ち着いたみてぇだな」
視線を空から声のした方に移すと、中にいるはずの土方さんがいた。
この羽織は禁門の変の時に着ていた私の羽織だ。