記憶の桜 -栄枯幻世-
船の上からは浅葱色の羽織を纏う男達が降りて来た。
そこで、信じられない光景を目にした。
「姉…上…?」
新選組の中に生き別れた姉の姿を見つけた。
あれから何年も経っている為、雰囲気は変わっていたが、あれは間違いなく姉の涼だ。
今は眠っているらしく、1人の男に背負われている。
「どうしたの?『愁』さん」
いつの間にか、妻の夏依(ナツイ)が隣に立っていた。
「いや、姉上があそこに…」
俺は夏依に姉上がいた方を指差すが、既にその姿は無かった。
見間違いだったのだろうか…?
しかし、この時、姉上を見かけたのは見間違いでは無かった。
そして、数日後。
俺は姉上と再会する事をまだ知らなかった――。


