あたしの彼は『ヒドイ男』
「立てる?」
低い声が耳元で響く。
ぶっきらぼうだけど、穏やかな声。
思わず素直に首を横に振った私を、その人はためらいもなく抱き上げた。
「わ……」
「えり子ちゃん!?」
ふわりと持ちあがった自分の身体に、驚いてその人の肩にしがみつく。
その場にいた会社の人たちも、焦ったように声をあげる。
「ちょっとだけ、我慢してろ」
ざわつく周囲を無視して私を抱き上げ運んでくれるその人。
男らしい端正な横顔。
少し長めの黒髪。
逞しい肩。
不機嫌そうにきゅっと結ばれた唇。
白地に黒のボタンとパイピングのコックスーツがすごく似合ってる。
彼のひとつひとつに見惚れているうちに、トイレへと連れていかれて、背中をさすり吐かせてくれた。