あたしの彼は『ヒドイ男』
 

「立てる?」

低い声が耳元で響く。
ぶっきらぼうだけど、穏やかな声。
思わず素直に首を横に振った私を、その人はためらいもなく抱き上げた。

「わ……」

「えり子ちゃん!?」

ふわりと持ちあがった自分の身体に、驚いてその人の肩にしがみつく。
その場にいた会社の人たちも、焦ったように声をあげる。

「ちょっとだけ、我慢してろ」

ざわつく周囲を無視して私を抱き上げ運んでくれるその人。

男らしい端正な横顔。
少し長めの黒髪。
逞しい肩。
不機嫌そうにきゅっと結ばれた唇。
白地に黒のボタンとパイピングのコックスーツがすごく似合ってる。

彼のひとつひとつに見惚れているうちに、トイレへと連れていかれて、背中をさすり吐かせてくれた。

< 19 / 74 >

この作品をシェア

pagetop