あたしの彼は『ヒドイ男』
 

酔っ払って吐きながら告白なんて、自分でもありえないと思うけど、
女の子から告白されて『頭大丈夫?』なんて言うカズもヒドイと思う。




「あのイケメン料理人に一目ぼれして、それから店に通い続けたんだっけ?」

「そうそう、猛烈にアタックし続けたんだよね」

ニヤニヤ笑うミナと山内さんにからかわれ、私は頬を膨らませた。


「別に通い続けてないもん。美味しいからお店に行ってただけだもん」

「そうだっけ? 私、毎週のようにあの店につき合わされてたんだけどなぁ」

確かに、無愛想で素っ気ないカズに一目ぼれした私は、お店でひたすら熱い視線を送り続た。
でも自分から告白するなんてとてもできなくて、『美味しかったです』って勇気をふりしぼってかけた一言にカズが小さく会釈をしてくれるだけで、飛び上がるくらい嬉しかった。

好きで好きで仕方なくて、一目顔を見たくてお店に通った。
一緒に付き合ってくれたミナには、『ケータイの番号聞け』とか『さっさと告白しろ』って嗾けられたけど、そんな勇気とてもなかった。
見ているだけで幸せだった。

オープンキッチンから見える料理を作るカズはかっこよくて、出てくる料理はおいしくて、店に通えば通うほど、どんどん好きになっていった。


そのうち私の奥手振りに呆れたミナがお店に付き合ってくれなくなり、ひとりで店に通うようになって。
カウンターの隅に座って、ぼんやりとカズの姿に見惚れ続けて。
でもカズは私がひとりでお店に行くと、いつも不機嫌そうな顔ばかりで。
この想いは叶わないんだなと思ってた。
それでもいいと思ってた。

そうやって半年近く一方的な片想いをして、ようやくカズが私に振り向いてくれた時は、嬉しくて涙が出た。




その時の気持ちを思い出すと、今でもちょっと泣きそうになる。

でも、今考えてみても、最初から私ばっかり好きで不公平だと思う。


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