あたしの彼は『ヒドイ男』
 



「あ、えり子ちゃん、こんばんはー」

仕事の帰りにカズの顔を見たくなって、すっかり通い慣れたお店の入口をくぐると、ウエイターの広瀬くんに声をかけられた。

「こんばんは。ごはん食べにきました」

「どうぞどうぞ」

広瀬くんはこの店で働く大学生の男の子だ。
明るくて愛想がよくて、カズとはまるで正反対の男の子。

私がはじめてこの店に来た時の大失態も、その後カズに会いたくてこの店に通い詰めていたのも知ってるから、もうすっかり顔見知りだ。

笑顔で通されたのは、オープンキッチンに面したカウンター席。
カズが料理を作るところがよく見える、私の特等席。

「カズさん、えり子ちゃん来てますよ」

「んー」

広瀬くんに声をかけられて、素っ気なく頷く、私のことなんて見向きもしないカズ。

忙しいのかもしれないけど、せっかくお店に来たんだから、笑顔の一つでも見せてくれたっていいのに。
そう思いながらメニューを見るふりをしてカズを睨んだ。
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