あたしの彼は『ヒドイ男』
「あ、まだ決めてないのに」
「黙って待ってろ」
「でも」
「いいから」
「……横暴」
ぽつりと文句を言うと、カウンターの向こうのカズが微かに目を細める。
私を見下ろす意地悪な表情。
それだけで胸がきゅんとなる。
あー、もう。どうして私ばっかりこんなにカズを好きなんだろう。
悔しくて黙り込むと、カズは勝ち誇ったようにくすりと笑い私に背を向けた。
それからしばらくして私の前に出されたお皿には、私が食べたかったワタリガニのパスタ。
しかも食べやすいように、ワタリガニの殻から身を取り出してあった。
一口食べて、思わず「おいしい」と呟くと、キッチンの中の男が微かに口元を引き上げて笑った。