あたしの彼は『ヒドイ男』
「カズ、ありがとう」
「なにが?」
「これ、ワタリガニの身が出てて食べやすい」
「別に。殻が割れたのがあっただけ。どうせ客に出せないし」
なんだ。
私のために、わざわざ食べやすく割って中の身を出してくれたのかと思ったら、殻が割れたカニを処分したかっただけなんだ。
素っ気ないカズに、不貞腐れながらパスタを食べる。
すると、うしろの席から楽しげな女の子の声が聞こえてきた。
「あの人カッコイイね」
「料理が出来る男の人っていいよねー」
くすくすと顔を寄せ合いながら、そんな事を言って笑い合う。
確かに、料理を作るカズはカッコイイ。
包丁を持つ真剣な眼差しとか、フライパンを握る逞しい腕とか、美しくお皿に料理を盛り付ける手際のよさとか。
料理を作る時の迷いなく動くカズの姿は、思わず見惚れてしまうくらい綺麗だ。
このカッコイイ男は私のものなんだよって、大きな声で言いたかったけど、そんなことお店でできるわけもなくて、頬を膨らませながら、鼻から大きく息を吐き出した。