あたしの彼は『ヒドイ男』
カズの野生動物みたいな仕草を見ながら、私はソファーの上にあったライターを、そっと部屋着のポケットに隠した。
二人で暮らす1DKのこのアパート。
カズが一人暮らしをしていた時に使っていた家具と、一緒に住みだしてから私の趣味で買ったものが混在してて、ちょっとちぐはぐな部屋。
壁にかかる時計はナチュラルで可愛い小鳥モチーフだけど、ベッドサイドの目覚まし時計はシンプルで素っ気ないデジタルだし。
ローテーブルは白木の天板に丸みのある猫足つきだけど、ソファーは革張りのミッドセンチュリーモダンの男らしいデザインだし。
私とカズの会話みたいに、なんだか噛み合ってない感じ。
そんな事を考えながらソファーの上で膝を抱え、壁にかかったカレンダーを見上げる。
三百六十五日分の日付が印刷されたポスター状のカレンダーに、私がこっそりハートマークを書きこんだのは、もうずいぶん前のこと。
カズはそのマークに気づいているのかいないのか、まったくそのことに触れられないままもうマークの書かれた日までは、一週間を切っていた。