Tricksters2ッ

「間違えていない。
 真部 淳一、トリックスターズ所長代理……という役職の雑用係」


「なっ? なんで本当のこと知ってんだよ!」


 いや、それは周知の事実か。俺雑用ばかりやらされてるもんな。 

 サングラスの男は感情のこもらない声で威嚇する。

 手に握られた銃が俺から外されることはない。

 スキンヘッド野郎は、じっと飛びかかる機会を狙っているみたいだ。



 サングラス野郎が顎で合図を出すと、スキンヘッド野郎が薬品の染み込んだハンカチ片手に俺に近づく。



「待った! 待てよ! 俺なんか誘拐してもしょうがねーだろ? 金にもならないし、男だし」


「金が目的ではない」


「なら、何が目的だ。その内容によっては大人しくついていってやる」


 ちくしょー、こんだけ足止めしてんのに、今日に限って中々通行人が現れない。

 駐車場は穏やかな日差しを受けて、まさに平和そのものだ。


 ちょうどマンションの死角になっているのは、住民のプライバシーを守るためだとか、今の俺には迷惑極まりない話だ。



「時間を稼ごうってわけか、オイ」

 スキンヘッド野郎が壁みたいな図体で近づいてくる。


「うわっー! やだやだ、その薬品頭がガンガンするだよ! 絶対体によくないもんがっ…………」


 ああ、そうそう、この感じ。

 脳みそ掴まれたみたいな痛みが走って、目の前が真っ暗になる─────



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