綺麗な百合にも棘がある
記憶の中の夏妃とは変わってしまっているが、自分と同じ大きめな二重の目はそのままだ。

「どうして!なっちゃんが」

「私が漫画家、那津木沙良だからよ」

「あぁ、お前が話してた姉ちゃんって、那津木先生だったのか。世の中、狭いな」

古賀は驚いた顔をしているが、どこか演技の様なモノを感じた。

「古賀さん、お待たせしました。原稿です」

「ありがとうございます。早速読ませていただきます」

「はい、お願いします。如月くんこれからこれからよろしくね」

名字を呼ばれて仕事に来ているのだと姿勢を正した。

「はい」

顔を見ると、記憶の中と同じ様に優しく笑ってる。

「なっちゃんあの」

聞きたいことがあった、夏妃が姿を消してからのことを。

「先生、お茶いかがですか?」

その間に亮に入られて出鼻をくじかれた。

「いただくわ」
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